皆さま、「卵子凍結」という言葉を、聞いたことはありますか?
聞いたことはあっても、「卵子凍結ってなに?」と思う方のほうが、まだまだ多いのではないでしょうか。
近年、健康な女性が、将来の妊娠に備えた選択肢として、卵子凍結を考える動きが出てきています。「卵子凍結が自分にとっての選択肢になるのか」と考えることがあるかもしれません。
また、ご自身だけのことではなく、部下や上司、先輩や後輩といった同僚が卵子凍結を選択することがあるかもしれません。働きやすい、また、これからも働き続けられる職場づくりのためにも、従業員全員が卵子凍結を正しく理解することはとても大切なことです。
聞いたことはあっても、「卵子凍結ってなに?」と思う方のほうが、まだまだ多いのではないでしょうか。
近年、健康な女性が、将来の妊娠に備えた選択肢として、卵子凍結を考える動きが出てきています。「卵子凍結が自分にとっての選択肢になるのか」と考えることがあるかもしれません。
また、ご自身だけのことではなく、部下や上司、先輩や後輩といった同僚が卵子凍結を選択することがあるかもしれません。働きやすい、また、これからも働き続けられる職場づくりのためにも、従業員全員が卵子凍結を正しく理解することはとても大切なことです。
医療法人財団順和会山王病院 名誉病院長
堤治(つつみ おさむ) 氏
― 卵子凍結は、将来の妊娠・出産の可能性を高める一つの選択肢
令和6年(2024年)日本における出生数は686,061人、合計特殊出生率は1.15で、史上最低を記録しました。
一方で、令和5年の出生率を母親の年齢別にみると、39歳以下では前年より低下しましたが、40~49歳の出生率は前年より増加しました。
また、体外受精などの生殖補助医療を受け出生した数は7万人を超え、その割合は10人に1人を超えています。
卵子凍結とは、「将来の妊娠に備えて、卵子を人工的に取り出し、受精前の状態で凍結させて保存すること」をいいます。
(東京都福祉局「いつか子供がほしいと思っているあなたへ」【外部リンク】から抜粋)
卵子の数には限りがあり、年齢とともに減少します。また、卵子の質は年齢とともに低下します。卵子凍結は卵子の時間を止め、将来の妊娠・出産の可能性を高める一つの選択肢となります。 一方で、卵子凍結は、メリットだけではありませんので、デメリットやリスクを正しく理解しておくことが非常に重要です。
(東京都福祉局「いつか子供がほしいと思っているあなたへ」【外部リンク】から抜粋)
卵子の数には限りがあり、年齢とともに減少します。また、卵子の質は年齢とともに低下します。卵子凍結は卵子の時間を止め、将来の妊娠・出産の可能性を高める一つの選択肢となります。 一方で、卵子凍結は、メリットだけではありませんので、デメリットやリスクを正しく理解しておくことが非常に重要です。
― 卵子凍結までのステップ
それでは、「卵子凍結」についてご説明します。
卵子凍結は大きく分けると「医学的卵子凍結」と「社会的卵子凍結」に二分することができます。
「社会的卵子凍結」にあたるものとして「ノンメディカルな卵子凍結*」という言葉もありますが、ここでは「社会的卵子凍結」という言葉で話を進めて参ります。
*東京都福祉局の卵子凍結
1.病気の治療により妊娠しにくくなることが懸念される場合の卵子凍結(がん等の病気の治療に先立っておこなう)
2.病気により妊娠しにくくなることが懸念される場合の卵子凍結(病気による卵巣の働きの低下に先立っておこなう)
3.健康な女性が、年齢とともに妊娠しにくくなることを懸念する場合の卵子凍結
東京都福祉局の卵子凍結「加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結」
卵子凍結までには時間がかかり、複数回の通院が必要となります。
例えば、私の病院(山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター)では、下記に示すようなステップで診療を進めています。
例えば、私の病院(山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター)では、下記に示すようなステップで診療を進めています。
未受精卵子凍結実施のステップ
①卵子凍結のメリット・デメリットの情報提供
②婦人科疾患や合併症の評価
③AMHを含む卵巣機能の評価
④年齢、卵巣機能から予測される予後説明
⑤卵巣刺激スケジュールや費用の説明
⑥妊娠希望時に実施する生殖医療の概要説明
卵子凍結は将来の妊孕性(妊娠するための力)を温存する意義はありますが、メリットだけではなく、デメリットと考えられることも少なくなく、それぞれの情報提供を行います。日本産科婦人科学会作成の動画*は、完成度が高く、視聴は必須と考え推奨しています。
卵子凍結を考えている、または興味のある方は、是非ともご視聴いただきたいと考えます。
― 「プレコンセプションケア」とは
卵子凍結を検討するにあたっては、妊娠・出産に対する理解はもちろん、ご自身のライフスタイルやライフサイクルを見直すことも重要です。
そのためには「プレコンセプションケア」が必要となります。
「プレコンセプションケア」は、比較的新しい概念です。
Conception(受胎)から派生した言葉で、こども家庭庁の「プレコンセプションケア推進5か年計画」では、米国疾病管理予防センター(CDC)が「女性の健康や妊娠転帰に対する医学的・行動的・社会的リスクを、予防と管理を通じて特定・修正することを目的とした一連の介入」をプレコンセプションケアとして提唱したとの記載があります。
将来の妊娠・出産に影響し得る各種の危険因子を減らすことも重要なミッションです。
「プレコンセプションケア」に「卵子凍結」をキーワードに加え幅広い年代に拡げていくことは、様々な効用が期待されると思います。
例えば、現在結婚の予定はないが、将来は子供を持ちたいと考えている女性が、「卵子凍結」を望まないと考えたとしても、自身のライフプランを考え直し、早々に結婚し妊娠・出産を前倒しにすることが期待できます。
「卵子凍結」を行った人たちの中には、早々に結婚し、自然妊娠をする方も少なくないことは、欧米のデータからも明らかです。
「子どもを持ちたい」という強い気持ちが、結婚を早めると思われます。
「卵子凍結」を行わなくても少し年齢の高いことを自覚すれば、結婚した場合、早期に不妊治療を開始するモチベーションに繋がり、行動変容の可能性が高まると言えます。
この数十年間、日本に限らず先進国では女性が社会に進出し、女性が活躍することが推奨され、女性の有職率が高まってきています。
有職率が高まるにつれ、女性の結婚年齢が高くなり、妊娠、出産、育児が先送りになった結果、挙児を希望する年齢が高くなり、不妊治療を必要とする女性が増えてきたと考えられます。
欧米諸国を見ると有職率と結婚年齢には日本のような相関があると言われ、日本には、若いときに妊娠、出産、育児が働きながらできる体制が整っていないという社会の問題があると考えざるを得ません。
このように、「プレコンセプションケア」は、単に教育に限らず広い意味で、この問題の解決にも目を向けるべきであり、産婦人科医である私の立場から言わせていただきますと、それこそが少子化対策の基本でもあると思います。
東京都(産業労働局)では、働く女性が自身のライフ・キャリアプランを考えたときに、卵子凍結を選択肢の一つとして認識し卵子凍結を行うか行わないかを選択できるようになるためには、女性はもちろん、周りの人たちへ正しい知識や認識を広めることも大切だとして、企業向けの普及啓発や、休暇等の制度を整える後押しをしており、重要な役割を果たしていると思います。
また東京都(福祉局)が、プレコンセプションケアの取組や、「卵子凍結に関わる費用」と「凍結卵子を使用した生殖補助医療」への助成を実施することにより、卵子凍結に対する注目が高まっており、都内施設で実際に卵子凍結を行う女性も近年、増えています。
― 最後に
最後に、私からメッセージがございます。
【卵子凍結に関心を持った方へ】
あいまいな知識だけで判断せず正しい情報を知ることが大切です。
将来の妊娠・出産に備えて卵子凍結を選択するということは、自分自身だけの問題ではないことも知っておく必要があります。
将来のパートナーや生まれてくる子どものことも考えたライフプランを検討することが大切です。
出産や子育てのこと、仕事のことなどを含めた具体的な人生設計を考えてみましょう。
【従業員、同僚の皆様へ 】
ライフプランとキャリア形成との両立を考えたときに、ご自身の意思で卵子凍結を選択する方が職場にいるかもしれません。
卵子凍結について正しく知って、お互いに支え合い働きやすい職場を作っていきましょう。
以上、どうもありがとうございました。
Author
― 執筆者紹介
堤治(つつみ おさむ)氏
医療法人財団順和会山王病院 名誉病院長
(略歴)
東京大学医学部産婦人科教授を経て、2008年から山王病院病院長、国際医療福祉大学大学院生殖補助医療胚培養分野 教授。
2021年より山王病院名誉病院長。日本受精着床学会、日本産科婦人科内視鏡学会等の理事長を歴任。
不妊治療・生殖医療全般を広く行い、子宮内膜症や子宮筋腫に対する内視鏡手術の名人で多くの症例を持つ。 現役産科医として分娩にも立ち会い、妊娠・出産の喜びを共有している。皇后雅子さまの愛子さまご出産に際し、東宮職御用掛として主治医を務めたことでも知られる。