東京都に本社を置き、戸建て事業を中心に成長を続ける総合不動産会社「株式会社オープンハウスグループ」。
近年は多様な人材の活躍を支えるべく、女性のヘルスケア・育児・介護といった各分野において、特別休暇や各種手当など多彩な制度を整備してきました。
2024年10月には新たに卵子凍結費用補助制度を導入。
今回は、同社の取組や背景について、管理本部 人事部兼総務部 課長の会見 春香さんと人材開発部 係長かつ女性活躍推進ワーキンググループメンバーであり、同制度の利用を検討している砂原 桃子さんに伺いました。
株式会社オープンハウスグループ
管理本部 人事部兼総務部 課長
会見 春香 氏(写真左)
株式会社オープンハウスグループ
人材開発部 係長
砂原 桃子 氏(写真右)
■多様なキャリア支援を制度面から後押し
― キャリア支援制度の基礎となる、貴社のカルチャーや価値観についてお聞かせください
会見さん:当社には「やる気のある人を広く受け入れ、結果に報いる組織をつくる」という企業理念があり、これは女性活躍においても、特に大切にしている価値観です。性別の違いはもちろん、勤務時間に制約があるかどうかなどライフステージに関わらず、「挑戦したい」という気持ちを持ち、結果を出す人を公平に評価する文化が根付いています。
経営層も、「やる気のある人が活躍できる環境」の整備を強く意識しています。特に福利厚生や人材育成においては、多様な経験や価値観、スキルを持つ人材が、それぞれの能力を最大限に発揮できる支援制度の構築に注力しています。
― 貴社の社員支援制度について概要をお聞かせください
会見さん:当社では2013年に「ダイバーシティ推進委員会」を設置して以来、多様な人材が安心して働ける環境づくりを進めてきました。さらに2024年には「ワークデザイン推進委員会」を新設し、現場の声を反映しながら、一人ひとりに寄り添った制度設計を行っています。
例えば、近年では介護をしながら働き続ける人も増えてきました。そこで、1か月あたり最大5万円を会社が支援する「介護支援手当」や、介護開始時に最大20日間の有給休暇を付与する「介護スタート休暇」を導入。また、必要に応じて年10日間の特別休暇(有給)を取得できる「介護ケア休暇」も整備し、仕事と介護の両立を支えています。
― 女性社員の声はどのように反映しているのでしょうか
当社では「ワークデザイン推進委員会」内に「女性活躍推進ワーキンググループ」を設置し、参画する女性社員が現場の声を持ち寄り、制度設計に反映できる体制にしています。具体的には、子育て世代の柔軟な働き方を支える「オープンキャリアデザイン制度*」を整備したり、妊娠・出産時には女性活躍推進WGのメンバーによる個別の「産前面談」「復職面談」などを実施する等、個々人の状況に応じた細やかなケアができる体制にしております。
さらには、出産祝い金(第一子20万円、第二子30万円、第三子以降100万円)、ベビーシッター費用(月最大30万円)、ひとり親手当(月5万円)など経済的支援も充実させています。
*オープンキャリアデザイン制度:子育て中の社員が柔軟な働き方を選択できるようにするための制度。所定労働時間の短縮(営業職は1日2時間から)、始業/終業時間のデザイン(保育園の送迎に合わせるなど)、年間休日の選択(年間休日125日など)が可能になる。
さらには、出産祝い金(第一子20万円、第二子30万円、第三子以降100万円)、ベビーシッター費用(月最大30万円)、ひとり親手当(月5万円)など経済的支援も充実させています。
出産時のみならず、女性の健康課題に対する施策も導入しています。例えば、生理痛で就業が難しいときに有給で取得できる「LDH休暇(ライフデザインホリデー)」は、名称を工夫することで利用時の抵抗感を軽減しています。加えて、ナプキンの備品化、25歳以上の女性を対象とした婦人科検診費用の補助なども導入し、2024年10月からは女性社員が自らのキャリアを主体的に考えることを支援するため、卵子凍結費用補助制度を開始。採卵までにかかる諸費用について、最大40万円まで補助を行っています。
― 「卵子凍結費用補助制度」はどのような経緯で導入されたのでしょうか
オープンハウスグループ主要4社の約3,000人の社員の中で、女性の割合は約3割。女性社員の平均年齢は29歳です。20代後半に差し掛かる女性社員が増える中で、「将来の選択肢を広げたい」という声が寄せられていました。ちょうど社長からも「キャリア形成の手段の一つとして卵子凍結はどうなのか」と投げかけがあり、東京都の助成制度の動きも追い風となって導入に至りました。
■セミナー必須化や年齢設定など、社員の「納得と安心」を第一にした制度設計
― 卵子凍結費用補助制度の設計にあたり、特徴的な取組はありますか
会見さん:2つあります。1つ目は対象者の方に必ずセミナーを受講していただくことです。セミナーは提携クリニックと共同で実施しました。女性医師と卵子凍結を経験した方にご登壇いただき、卵子凍結の基本的な流れを説明するとともに、特にリスクや注意点について丁寧にお話しいただいています。制度化で重視したのは「妊娠の先送りを推進している」と誤解されないことです。そのため、セミナーは卵子凍結のメリットだけではなく、リスクも含めた情報提供を重視しました。
なお、セミナーは対象者だけではなく全社員に案内し、男性社員や管理職も参加できるようにしています。興味のある人は誰でも受講可能で、匿名でのリモート参加も可能です。こうした工夫によって、幅広い層が安心して学び、正しく理解したうえで制度を活用できる環境を整えています。
2つ目は四コマ漫画の制作と、それを用いた啓蒙活動です。制度内容や業務調整のポイントを、利用者本人だけではなく上司や同僚にもわかりやすく伝えることを目的としました。イラストレーターに依頼しつつ、シナリオは社員が考案。例えば「卵子凍結のために休みたい」と伝えた際の上司の対応など、文章では伝わりにくい場面を視覚的にイラストで分かりやすく工夫しました。その四コマ漫画は全社へメール配信し、さらにポスターとして拠点に掲示するなどして啓蒙活動を行いました。「制度が理解しやすい」「イメージしやすい」といった声が寄せられ、一定の成果を感じています。
制作した四コマ漫画
制作した四コマ漫画
― 年齢制限や費用はどのように設定されたのでしょうか
会見さん:制度設計では、東京都が先行して実施していた「卵子凍結に係る費用の助成」制度を参考にしました。都の対象は18歳以上40歳未満ですが、当社は新卒入社後3年程度働いたタイミングから利用できるよう、採卵日における年齢が25歳以上40歳未満を対象としています。
費用補助は初期費用を想定し、最大40万円までとしています。自治体の助成制度を併用する場合は自治体支給分を差し引いて会社が補助します。その後に発生する保管費用は、提携クリニックのクーポンを利用することで、個人で利用するよりも多少お安く利用できる仕組みになっています。
― 実際の相談から、利用開始までの具体的なフローを教えてください
会見さん:まずはじめにセミナーに参加していただきます。年1回の現地開催に加え、アーカイブ動画での受講も可能で、終了後に「セミナー参加完了フォーム」を提出します。その後、制度利用を希望する場合は「申請フォーム」に申し込み、人事部が年齢や、セミナーに参加したかどうかといった利用条件を確認。対象と認められれば本人が通院し、採卵・卵子凍結を実施し、完了後に費用を申請する仕組みです。
■利用者側の声からも実感、女性支援制度の広がりと職場の理解
― 卵子凍結費用補助制度ができたことで、ご自身の働き方や将来の考え方に変化はありましたか
砂原さん:入社当時はこの制度がなく漠然と「20代後半で出産するのだろう」と考えていましたが、制度ができたことで、今は「将来子供が欲しいと思ったときに会社が支援してくれる」という安心感を持てるようになりました。
年齢を重ねても挑戦できる選択肢が増えたことは大きな心境の変化です。
セミナーには興味を持った社員が気軽に参加しており、参加できなかった社員に対してもポータルサイトで動画を視聴できる仕組みも用意されています。実際の参加者は30歳前後の社員が多い印象で、私の後輩世代も関心を持って視聴していました。全体として制度に対する印象は好意的だと感じています。
それぞれのライフステージや価値観に応じて、自分に合ったタイミングで選択できる制度として浸透し始めていると感じます。
― 女性支援制度を通じて、社員の働き方やキャリアへの意識にどんな変化がありましたか
砂原さん:女性の立場から見ると、制度は非常に充実してきていると感じます。健康診断で利用できる婦人科検診制度は、長くキャリアを築くうえでの健康面のサポートになるので、大変ありがたいと思っています。また、LDH休暇(生理休暇)など女性特有の悩みに寄り添った制度もあり、男性には理解されにくい部分を会社がしっかり後押ししてくれていると実感しています。他社と比べても制度が手厚く、この会社で長く働き続けたい、復帰したいと思える要因になっています。
会見さん:オープンキャリアデザイン制度が導入されてからは、子どもを出産した後も職場に復帰し、キャリアを上げている女性社員が増えていきました。制度がなかった時代に比べ、今は明らかに選択肢が広がり、中長期的なキャリア構築のイメージが湧きやすくなっていると感じます。実際に、過去5年間における育休からの復帰率は100%を維持しており、制度が働きやすさとキャリア継続をしっかり支えていると言えるでしょう。
― 生理による休暇取得について、管理職や上層部の理解や反応はいかがでしょうか
会見さん:当社では、人事部の役員からも積極的に発信していることもあり、LDH休暇(生理休暇)を取りにくい雰囲気はほとんどありません。取得に対して否定的な態度を示す社員も限りなく少ないと感じています。
厚生労働省のデータによると、生理休暇を請求した者の割合は全国で0.9%程度と非常に低い水準*ですが、当社の場合は「LDH休暇」と名称を工夫し、取得しやすい仕組みを整えたことで状況が大きく異なります。現在では取得率は1割に達し、世の中全体と比べれば高い水準であり、これは制度名の工夫や管理職の理解浸透があってこそだと思います。
*厚生労働省「働く女性と生理休暇について」令和5年9月28日
■卵子凍結費用補助制度をきっかけに、不安を解消しキャリア継続を支える仕組みづくり
― 採用活動において、卵子凍結費用補助制度の導入はどのような効果をもたらしていますか
砂原さん:弊社には不動産業界にありがちな「体育会系で男性が多い会社」というイメージを持たれることもありますが、女性活躍を後押しする制度がこれだけ整っていると伝えることで、良い意味でのギャップを感じてもらえているようです。新卒採用者は年齢的に卵子凍結を現実的に考えている方はまだ少数ですが、卵子凍結費用補助制度が整備されていることが女性志望者の将来的な不安解消や応募意欲につながっていると実感しています。
制度を整えた甲斐もあってか、女性からの応募が増えている印象があります。実際、女性志望者のほとんどが面接の際に女性支援制度について質問しており、制度の存在が採用活動における大きな強みになっていると考えています。
― 制度導入を通じて、女性社員全体のキャリア意識にどのような変化がありましたか
砂原さん:これまでに「30歳までに子どもを持ちたい」といった考えをもっていた社員も、実際に働く中で「もう少しキャリアを積みたい」と思うようになることがあります。今回の制度によって選択肢が広がり、より前向きに自分のキャリアとライフプランを考えられるようになったと感じています。
会見さん:これまで女性活躍推進の取組支援といえば、子育て社員を対象とした両立支援が中心でした。卵子凍結費用補助を導入したことで、会社は「社員のライフステージに関わらず、より多様な価値観や人生設計に対し寄り添い、支援していく」という姿勢を示すことにつながったのではないかと考えています。
一般的に30歳に差し掛かるタイミングで今後のキャリアやライフプランについて悩みを抱える女性は少なくないと思いますが、卵子凍結はそういった悩みに対して、自らの人生を主体的に考えるための選択肢の一つになっていると感じています。
一般的に30歳に差し掛かるタイミングで今後のキャリアやライフプランについて悩みを抱える女性は少なくないと思いますが、卵子凍結はそういった悩みに対して、自らの人生を主体的に考えるための選択肢の一つになっていると感じています。
― 女性がより長く、活躍を続けられる会社にしていくうえで、女性支援制度はどのような意味を持っていますか
会見さん:当社の女性活躍支援制度はすべて、「やる気のある社員に、活躍の場を提供する」という企業理念に基づいています。
社員が結婚や出産といったライフイベントを迎えた際に、それがキャリアを諦める理由になってはならない、というのが私たちの想いです。女性が長期的に活躍するイメージを持つためには、多様な支援が必要だと考えています。
具体的には、「OPENキャリアデザイン制度」のようなキャリアと子育ての両立支援、「婦人科検診」や「LDH休暇」といった心身の健康を守る支援、そして「卵子凍結費用補助」のように、社員がより主体的に自らのライフプランを描くための選択肢を増やす支援です。
これらの支援制度を利用し、女性社員がこれまで培ったスキルや経験を生かして長期的に活躍出来るようになれば、それはひいては会社全体の成長につながると考えています。
具体的には、「OPENキャリアデザイン制度」のようなキャリアと子育ての両立支援、「婦人科検診」や「LDH休暇」といった心身の健康を守る支援、そして「卵子凍結費用補助」のように、社員がより主体的に自らのライフプランを描くための選択肢を増やす支援です。
これらの支援制度を利用し、女性社員がこれまで培ったスキルや経験を生かして長期的に活躍出来るようになれば、それはひいては会社全体の成長につながると考えています。
■制度拡充から意識改革へ。社員がキャリアを前向きに描く環境づくり
― 卵子凍結費用補助制度を含めた女性支援の施策について、今後の展開や構想をお聞かせください
会見さん:両立支援に関する制度面では、一定のカバーができていると考えています。今後は、社員一人一人が自らのライフプランやキャリアを積極的に考えていけるよう、キャリア研修やメンター制度のような「ソフト面」の充実にも力を入れていきたいと思っています。
現在も年に一度「若手女性研修」を開催しており、ロールモデルとなる女性社員が登壇して、自身のキャリアやライフプランについて語るパネルディスカッションを行っています。今年度もその企画を継続する予定です。また、役員によるキャリアワークショップを通じて、社員が自分自身の目標を考えるきっかけを提供する取組も進めています。
― これから卵子凍結費用補助制度の導入を考える企業に向けて、運用や仕組みづくりで特に意識すべき大切なポイントはどんなところでしょうか
会見さん:卵子凍結費用補助は女性活躍における課題の万能な解決策ではなく、キャリアに悩む女性に新たな選択肢を一つ増やすだけに過ぎません。しかし、女性が子供を産む時期を自分の意思である程度コントロールできる可能性があり、それがキャリアを前向きに考えるきっかけとなるなら、企業が支援する意義は十分あると思います。
卵子凍結費用補助はあくまで手段に過ぎず、大切なのは制度そのもの以上に「社員のキャリア選択を応援する」という姿勢です。現場で働く社員が何を求めているのかを常に考え、広く情報収集しながら、今後も社員に安心を与えるより良い制度づくりを進めたいと思います。
卵子凍結費用補助はあくまで手段に過ぎず、大切なのは制度そのもの以上に「社員のキャリア選択を応援する」という姿勢です。現場で働く社員が何を求めているのかを常に考え、広く情報収集しながら、今後も社員に安心を与えるより良い制度づくりを進めたいと思います。
Interviewee
― 企業紹介
株式会社オープンハウスグループ
1997年創業。従業員数5,990名(連結・2025年3月末時点)。主な事業内容は戸建、マンション、収益不動産、アメリカ不動産を中心に住まいや暮らしに関するサービスを展開。
「お客様のニーズを徹底的に追求し、価値ある不動産を届けます」という企業使命を掲げ、市場のニーズに応えたサービスを行うマーケットインの姿勢を徹底的に貫き、顧客にとって価値がある不動産を提供し続けている。多様な経歴、バックグラウンドを持った従業員一人ひとりを尊重し、性別、年齢、国籍等の属性にとらわれない多様性を活かした働きやすい環境を作ることを企業の価値観の一つとしている。